詫びに夕飯でも奢る、と言ったのに国安はもう一度花見に行こうと言った。
「ろくに花見てないだろ?俺もおまえの面倒押し付けられちゃったし。結構咲いてたんだけどな。」
「スミマセン。てかもー、酒は飲まねえ。」
「そうしてください。」
だらり、と傾斜がゆるい変わりに長くゆるく曲がった坂を昇っていくと、
道の両脇に会った住宅は数を減らし、代わりに雑木林が増えてくる。
春の夕暮れは早い。
街灯があっても薄暗い道を二人で歩く。
夜の暗さよりも、夕暮れの明るさの方が苦手だ。
暗くなる寂しさと、明るさに頼って素直になりすぎてしまう気がする。
「辻本ってさぁ・・・。」
「ん?」
横顔を見せたまま何かを言いかけた国安が黙る。
「何でも無い。」
「ならいいや。」
こんな夕暮れ時に何か聞かれたら素直になんでもかんでも喋ってしまいそうだ。
歯切れの悪い会話をしてる間に高台の頂上にたどり着く。
一応平らに整地された丸い広場。
真ん中にシンボルのような大きな桜の木。
街灯が作る輪の外にも何本か桜の木がある。
それぞれがぼんやりと白く光るような花びらを纏っている。
「うーわ寒いな。」
「おう、さすがに桜が咲いてるだけあるわ。」
「ろくに花見てないだろ?俺もおまえの面倒押し付けられちゃったし。結構咲いてたんだけどな。」
「スミマセン。てかもー、酒は飲まねえ。」
「そうしてください。」
だらり、と傾斜がゆるい変わりに長くゆるく曲がった坂を昇っていくと、
道の両脇に会った住宅は数を減らし、代わりに雑木林が増えてくる。
春の夕暮れは早い。
街灯があっても薄暗い道を二人で歩く。
夜の暗さよりも、夕暮れの明るさの方が苦手だ。
暗くなる寂しさと、明るさに頼って素直になりすぎてしまう気がする。
「辻本ってさぁ・・・。」
「ん?」
横顔を見せたまま何かを言いかけた国安が黙る。
「何でも無い。」
「ならいいや。」
こんな夕暮れ時に何か聞かれたら素直になんでもかんでも喋ってしまいそうだ。
歯切れの悪い会話をしてる間に高台の頂上にたどり着く。
一応平らに整地された丸い広場。
真ん中にシンボルのような大きな桜の木。
街灯が作る輪の外にも何本か桜の木がある。
それぞれがぼんやりと白く光るような花びらを纏っている。
「うーわ寒いな。」
「おう、さすがに桜が咲いてるだけあるわ。」
東京よりも一足も二足も遅い桜前線がこの街にもやってきて、ほぼ通り過ぎた。
大学の裏の高台、というより山の上は、高低差のお陰でまだ咲いてるだとか、穴場だとか、親睦会だとか、とにかく飲み会だ、
と先輩達に誘われた――むしろ拉致されたんだった。
はっちゃけた先輩に苦いばかりのビールを飲まされて、桜を見た記憶も無く・・・。
「・・・・・・うぁ」
きっちり一部分(と思いたい)記憶が抜けている。
どうやって家まで帰ったんだ?
この体調悪いのってもしかして二日酔い?
「・・・マジで?」
「マジマジ。国安に謝っときな。」
「うぁぁ・・・・・・・」
慌てて国安に頭を下げようとすると、ニコニコしながら手を振った。
「いやー良いって。パーカー一枚ダメになっただけだし。」
「あ、」
「夜中に住宅地で叫ぶから、どっかのお宅から怒鳴られただけだし。」
「うあ、ご・・・」
「物凄い勢いでしがみ付かれてわき腹に痣できただけだし。」
「くに・・・」
「アパートの鍵が開かない〜って泣いてるトコ見れたし。」
「げっ!」
「まー、チャリの鍵を一生懸命挿してたんだけどさ〜。」
「・・・、・・・。」
「いいっていいって、気にしなくていいって。俺っていー人だから。写メ撮ったりなんか、ましてやムービーなんて撮ってないし。
別に誰に言いふらそうとかも思ってないし。 ゲロ本、なんて酷い渾名で呼んだりなんかもしないしさ。」
「・・・ご、ゴメンナサイ。」
「いやいや。」
「・・・。」
「・・・。」
あまりの自分の失態に謝りの言葉すらまともに出てこない。
反対に国安は零れんばかりの笑顔になっている。
輝く笑顔の影にはっきり悪意が見えるのは、――二日酔いのせい、と信じておく。
「・・・なにかお詫びを。」
「・・・。いやあ、悪いよ。でも、ま・そこまで気にするなら何かして貰おうかな。 辻本もそのほうがすっきりするでしょ」
にんまり、と国安が笑った。
悪魔ってきっとこんな顔で笑うんだろうよ。
物事が思い通りに運ぶのが楽しくて仕方ないって笑顔だ。
やっぱり悪意が見える。
「口止め料ってヤツだな。」
沢田がいつものようにやたら真剣に言った。
大学の裏の高台、というより山の上は、高低差のお陰でまだ咲いてるだとか、穴場だとか、親睦会だとか、とにかく飲み会だ、
と先輩達に誘われた――むしろ拉致されたんだった。
はっちゃけた先輩に苦いばかりのビールを飲まされて、桜を見た記憶も無く・・・。
「・・・・・・うぁ」
きっちり一部分(と思いたい)記憶が抜けている。
どうやって家まで帰ったんだ?
この体調悪いのってもしかして二日酔い?
「・・・マジで?」
「マジマジ。国安に謝っときな。」
「うぁぁ・・・・・・・」
慌てて国安に頭を下げようとすると、ニコニコしながら手を振った。
「いやー良いって。パーカー一枚ダメになっただけだし。」
「あ、」
「夜中に住宅地で叫ぶから、どっかのお宅から怒鳴られただけだし。」
「うあ、ご・・・」
「物凄い勢いでしがみ付かれてわき腹に痣できただけだし。」
「くに・・・」
「アパートの鍵が開かない〜って泣いてるトコ見れたし。」
「げっ!」
「まー、チャリの鍵を一生懸命挿してたんだけどさ〜。」
「・・・、・・・。」
「いいっていいって、気にしなくていいって。俺っていー人だから。写メ撮ったりなんか、ましてやムービーなんて撮ってないし。
別に誰に言いふらそうとかも思ってないし。 ゲロ本、なんて酷い渾名で呼んだりなんかもしないしさ。」
「・・・ご、ゴメンナサイ。」
「いやいや。」
「・・・。」
「・・・。」
あまりの自分の失態に謝りの言葉すらまともに出てこない。
反対に国安は零れんばかりの笑顔になっている。
輝く笑顔の影にはっきり悪意が見えるのは、――二日酔いのせい、と信じておく。
「・・・なにかお詫びを。」
「・・・。いやあ、悪いよ。でも、ま・そこまで気にするなら何かして貰おうかな。 辻本もそのほうがすっきりするでしょ」
にんまり、と国安が笑った。
悪魔ってきっとこんな顔で笑うんだろうよ。
物事が思い通りに運ぶのが楽しくて仕方ないって笑顔だ。
やっぱり悪意が見える。
「口止め料ってヤツだな。」
沢田がいつものようにやたら真剣に言った。
散り始めて、やっと桜が咲いていたことに気が付いた。
地面に落ちて誰かに踏まれ風に弄られ色の変わった花びらが、立ち止まった足元に吹き溜まっていた。
見上げると、緑が覗く枝に花びらがしぶとくしがみつくようにさいている。
越してきてから毎日歩く道。
異様なほどひねくれた枝、生きている植物と思えないような黒さのごつごつとした肌、この木が桜の木だったのか。
風の中、枝に必死でしがみついてる花びらが妙に惨めで、目を逸らし足元だけを見て歩き出す。
日に晒されて白くなり、色の変わった花びらが、風の形を模して流れて行った。
「あ・辻本来た。」
「うーはよーー。」
「早くねーよ、2現どしたよー」
「忘れてたー」
「忘れんなよ。寝坊?」
忙しいと言うよりもただ気忙しかった入学後の一ヶ月が過ぎれば、なんとなく友人も出来た。
やたらと広い学食の中でも、なんとなく定位置は決まってくる。ぼんやりしたままの頭で歩いていても国安と沢田に会えた。
ぼんやりした頭にまで染み入ってくるからかいの言葉と心配してる声。
「あー起きてた。眼ぇ覚めてたんだけど身体動かせる気力が出なくって。」
「五月病かよ。」
「それないだろう。そんなに繊細じゃねーだろうし。」
「いやいや、わかんないよ。最近流行ってるし。どっかでうつされて来たんじゃね?」
「うるせえよお前等。大体なんだよ『最近流行ってる』って。五月病なら五月に流行ってて当たり前だろうがさ。つーか感染しねーよ!
大体、本人に向かって繊細じゃないとか言っちゃう沢田よりは繊細だと思うぞ、俺は。」
「・・・辻本ってやっぱり突っ込みだよなー。よく噛まずにそんなに長く喋れるよね。」
ゆったりと国安が感心する。
「ん。喋ってる内容ってちゃんと頭の中で纏めてる?」
真剣な顔で沢田が質問を重ねてくる。
「・・・・・・・オマエラって高校でもそうやってボケ倒してたのか?」
二人の高校時代の友人に心から憐憫の情が湧く。
できれば送り返したいが。
「そんなことないよー、俺しっかりモノー」
「オレもー。」
「・・・・・・どーこーがーだ!」
「えー。」
「えぇー。」
「だってー飲めない酒飲んで酔っ払ったりしないしー。」
「なー、クダ巻いたりしないもんなー。 やっぱり俺らしっかりもの〜」
「しっかも酔っ払って人にゲロ引っ掛けたやつが繊細とも思えないし〜。」
「なー。」
「なー。」
「・・・・・・」
ぐらり、と眩暈がするほど昨夜の記憶が蘇ってきた。
地面に落ちて誰かに踏まれ風に弄られ色の変わった花びらが、立ち止まった足元に吹き溜まっていた。
見上げると、緑が覗く枝に花びらがしぶとくしがみつくようにさいている。
越してきてから毎日歩く道。
異様なほどひねくれた枝、生きている植物と思えないような黒さのごつごつとした肌、この木が桜の木だったのか。
風の中、枝に必死でしがみついてる花びらが妙に惨めで、目を逸らし足元だけを見て歩き出す。
日に晒されて白くなり、色の変わった花びらが、風の形を模して流れて行った。
「あ・辻本来た。」
「うーはよーー。」
「早くねーよ、2現どしたよー」
「忘れてたー」
「忘れんなよ。寝坊?」
忙しいと言うよりもただ気忙しかった入学後の一ヶ月が過ぎれば、なんとなく友人も出来た。
やたらと広い学食の中でも、なんとなく定位置は決まってくる。ぼんやりしたままの頭で歩いていても国安と沢田に会えた。
ぼんやりした頭にまで染み入ってくるからかいの言葉と心配してる声。
「あー起きてた。眼ぇ覚めてたんだけど身体動かせる気力が出なくって。」
「五月病かよ。」
「それないだろう。そんなに繊細じゃねーだろうし。」
「いやいや、わかんないよ。最近流行ってるし。どっかでうつされて来たんじゃね?」
「うるせえよお前等。大体なんだよ『最近流行ってる』って。五月病なら五月に流行ってて当たり前だろうがさ。つーか感染しねーよ!
大体、本人に向かって繊細じゃないとか言っちゃう沢田よりは繊細だと思うぞ、俺は。」
「・・・辻本ってやっぱり突っ込みだよなー。よく噛まずにそんなに長く喋れるよね。」
ゆったりと国安が感心する。
「ん。喋ってる内容ってちゃんと頭の中で纏めてる?」
真剣な顔で沢田が質問を重ねてくる。
「・・・・・・・オマエラって高校でもそうやってボケ倒してたのか?」
二人の高校時代の友人に心から憐憫の情が湧く。
できれば送り返したいが。
「そんなことないよー、俺しっかりモノー」
「オレもー。」
「・・・・・・どーこーがーだ!」
「えー。」
「えぇー。」
「だってー飲めない酒飲んで酔っ払ったりしないしー。」
「なー、クダ巻いたりしないもんなー。 やっぱり俺らしっかりもの〜」
「しっかも酔っ払って人にゲロ引っ掛けたやつが繊細とも思えないし〜。」
「なー。」
「なー。」
「・・・・・・」
ぐらり、と眩暈がするほど昨夜の記憶が蘇ってきた。
カウンターが酷いことになってます。
設定してないのにバカスカ2重カウントされてしまう・・・
・・・どころか、ページを移動するだけでカウンタが回るようで。(2重カウンタってそう言うもの?
PCの調子も悪いし、今週は更新できないかも。
設定してないのにバカスカ2重カウントされてしまう・・・
・・・どころか、ページを移動するだけでカウンタが回るようで。(2重カウンタってそう言うもの?
PCの調子も悪いし、今週は更新できないかも。




